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夏まゆみさんが「自分の夢に確信が持てないなら口に出してみよ」と説いた意味

 誰にも言わず、あるいは言えず、ひそかに抱えている自分の夢や目標。それを叶えるためには、どうしたらいいでしょうか。

 ダンスプロデューサー/指導者として活躍された夏まゆみさん(2023年6月逝去、享年61)は「夢や目標は積極的に口に出して有言実行にすべき」との教えを残していました。

 その心は「自分の本心を試すこと」でもあるから。 夏さんの代表作のひとつ『エースと呼ばれる人は何をしているのか』から一部を抜粋し、夢を語り、有言実行と不言実行をどう使い分けたらいいのか」についてのメッセージをご紹介します。

たった一度夢を語れば、自分の「本心」が見えてくる

 自分がどれだけ頑張っているかを声高らかに喧伝(けんでん)する必要はありませんが、それが「夢」のこととなれば話は別です。「私はこうなりたい」という夢や目標は、むしろ積極的に口に出して「有言実行」にすべきです。

 私がアイドルの卵たちを指導するときも、各人が何をしたいのか、将来どうなりたいのかを、なるべく本人の口から言わせるようにしています。夢をはっきりと口に出した瞬間から、その言葉は現実を引き寄せる力を持ちはじめるし、本人もまた自分の口から出た言葉に対して責任を持つようになるからです。

 たとえば元AKB48の板野友美はかなり早い段階からソロデビューを視野に入れ、「将来はBOAちゃんみたいに、バックにダンサーを背負って自分はセンターに立つ人になりたい!」と公言していました。そしてその言葉どおり、彼女はソロ歌手になりました。自分の言葉に責任を持ち、夢に向かって努力を重ねたことが現実を引き寄せたのです。

 私自身も、夢を公言して実現させた経験を持っています。

 あれはモーニング娘。関連の仕事がひと段落した時期のことです。

 そろそろ何か新しいことに挑戦したいな──。

 そんなことを話していたら振付師の仕事として映画の話が舞い込んできました。そのときにカット割りなど映画制作に対しての思いを口にしていたら「じゃあ撮ってみる?」とお声がかかり、今度は映画監督の仕事が舞い込んできたのです。

 それが2005年公開の『female/フィーメール』です。これは五本の短編作品からなるオムニバス映画で、私はオープニングやエンディング、そしてその間に数分間挿入されるダンス映像の振り付けと監督を任されることになりました。こんなお仕事、自分から「やってみたい!」とアピールしていなければ絶対に実現しなかったことでしょう。

「私の夢は、人に話すほどのものではないから……」

 そんなふうに思っている方にこそ、一度「夢の有言実行」をしてみることをおすすめします。なぜなら夢を公言することは、自分の「本心」を試すことでもあるからです。

 人前で「私は○○になりたい!」と口に出してみて、言ったとたんに「私って本当に○○になりたいの?」と迷いや違和感が生じたら、あなたがさほどその夢にこだわっていないということです。逆に「言ったからには実現するぞ!」という気持ちがわいてきたら、あなたの夢は本物といえます。

 自分の夢に確信を持てないときこそ、リトマス試験紙として「有言実行」をためしてみてはいかがでしょう。そのうえで、「夢への階段」を描いてみれば、次に進むべきステップはより明確になるはずです。

「有言」と「不言」を上手に使い分けなさい

「有言実行」と「不言実行」のどちらを採用すべきかは、そのときどきの状況や本人の性格によって異なります。

 一般的には、大きなチャンスを呼び寄せたいとき、自分を追い込みたいとき、自分の気持ちをたしかめたいときは、どんどん夢を口に出すといい。すると少しずつ状況が変わってくるので、今度はその状況を見ながら「有言実行」を継続すべきかどうかを判断します。

 具体的には、「応援するよ」「今度新しいプロジェクトに推薦しようか」と好意的に受け止められているようなら発言を継続し、「生意気だ」と逆風が吹いてきたなら「不言実行」へと作戦を切り替えるのです。

 ただし性格的に「有言実行」が合わない人もいます。

 AKB48時代の前田敦子がまさにそうで、彼女は少なくとも私の前では一度も夢を語らず、徹頭徹尾「不言実行」を貫きました。じつはそうやって自分の夢を「秘めたる闘志」に変えることができたからこそ、前田はセンターの孤独と重圧に耐えることができました。

 不言実行のもと陰で努力した意志と努力の積み重ねは、積もれば積もるほど大きな「自信」へと姿を変えて自分のなかに残ります。重ねた努力は必ずパフォーマンスや結果に表れ、それを評価してくれる人も必ずいます。

 そして「自分は努力できる」という内側からの自信と、外側(周囲)からの自信、両方を得ることができるのです。

 自信を身につけた人の努力はさらに深いものとなり、自信を身につけた人のパフォーマンスはさらに高い質や量を見せてくれます。そうしてまた自信が生まれるという理想的な循環が生まれるのです。

「自己を確立し、自信を持ち、前に向かって進む──」

 そうお話ししたように、エースとなる人は自分なりの自信を持っています。その自信をつけるための方法が、この有言実行と不言実行なのです。

<本稿は『エースと呼ばれる人は何をしているのか』(サンマーク出版)から一部抜粋して再構成したものです>)

(編集:サンマーク出版 Sunmark Web編集部)


【著者】
夏まゆみ(なつ・まゆみ)
ダンスプロデューサー/指導者

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